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研究室紹介インタビュー

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社会基盤親和技術論分野の紹介

―どんなことを研究されているのですか?

土木工学のうち、地盤環境工学に関する研究をしています。地盤中での汚染物質の挙動予測と対策工の開発、建設工事や産業活動によって生じた副産物のリサイクルに関する研究、地温上昇が地盤挙動に及ぼす影響の評価、災害廃棄物の効率的な分別と有効活用に関する研究など、テーマは多岐にわたっています。
代表的な研究テーマとして、当研究室では過去約20年にわたり、ベントナイトを原位置土に混合して構築するソイルベントナイト(SBM)鉛直遮水壁を対象に、汚染物質の封じ込め技術に関する研究を行ってきました。ベントナイトは天然の粘土の一種ですが、地盤中の水分と接触すると数倍に膨潤する特徴を有しており、地盤内の間隙を充填することでSBMは高い遮水性を発揮して汚染の拡大を抑制します。我々はSBM遮水壁の信頼性向上を目指し、これまでに化学物質の遮水性能への影響、地震時の挙動、化学的拡散による物質輸送などについて検討を行いました。他には、建設工事に伴って発生する、自然由来の重金属等を含む掘削土砂への対応にも力を入れています。地質体に天然に含まれる自然由来の重金属等は環境基準値をわずかに超えた濃度レベルで比較的低濃度で分布すること、汚染物質を飲用または吸引しなければ健康被害は生じないこと、土は重要な資源であることを踏まえると、そのような自然由来の重金属等を含む掘削土砂を周辺環境に配慮しながら地盤材料として有効活用することが望ましいといえます。このような掘削土砂を地盤材料として利用する上では、汚染物質の溶出特性を把握することが重要になります。しかし、地盤材料中の有害物質の挙動は理想的な化学反応とは異なり、間隙構造や飽和状態などの地盤条件にも影響されるため反応機構は複雑で、未だに十分な知見が蓄積されておらず、特に長期的な挙動について未解明な部分が多いのが実状です。当研究室では15年近くにわたり、土や岩石等からの重金属等の溶出特性を評価してきました。

―研究室はどのように運営されていますか?

当研究室は工学部地球工学科・工学研究科都市社会工学専攻の教育も担当していて、研究室には地球環境学舎と工学研究科に属する学生が所属していますが、ゼミ発表などの研究室の活動は区別なく一緒に行っています。2023年4月現在、研究室には博士後期課程の学生6人、修士課程の学生11人、学部生4人が所属しています。そのうち地球環境学舎の修士課程の学生は5人です。月に1度、研究の進捗状況を報告するゼミを行い議論しています。

―院生の皆さんがされている研究について教えてください。

地質・場所ごとに特性が異なる「地盤」を扱う地盤環境工学は、一般化が難しい学問です。そのため、手を動かして実験に取り組み試行錯誤を繰り返す過程が重要で、実験を通じて自ら課題を解決する力を培うことが期待されます。例えば、災害廃棄物の研究では、発災後の迅速な復興に向けて、災害廃棄物に含まれる土と廃棄物を効率よく分別し、土を復興資材として活用し廃棄物量の減量化を図るという目的に対し、学生自ら実験計画を立てて研究成果を挙げました。具体的には、木材と土を混合して模擬災害廃棄物を作成して室内試験・実機試験によるふるい選別を行い、細粒分が多く含まれる粘土ほど、土の粘性によって木材の選別が難しくなる可能性を明らかにしました。

― 研究室の雰囲気について教えてください。

自由な雰囲気のもと、各自が自立して研究を進めています。また、実験を行うため、多くの学生が研究室に集っているのも特徴です。さらには、留学生が多く、実際の建設業で活躍されている博士課程の社会人の方々も在籍していることから、多様な人が集まる場という点も特色といえます。

― 研究室を卒業した学生は、どういった方面で活躍されていますか?

建設業やインフラ業に務める卒業生が多いです。公務員になる人や、大学や国立の研究所で研究を続ける人もいます。各自、専門の土木工学・地盤環境工学の知識と経験を活かして活躍しています。

(地球親和技術学廊)

実大スケールでの災害廃棄物のふるい分け試験
土からの重金属の溶出を評価する試験
廃棄物処分場の見学
顕微鏡観察

都市基盤デザイン論分野の紹介

―どんな研究室ですか?

この研究室は、「景観」をキーワードとして、都市計画を包含した都市施設と公共空間の景観と都市のデザインおよび関連する計画の方法について、工学的アプローチによる探求と実践的研究を実施しています。昭和の高度成長期の頃、高速道路の建設をはじめ、都市や国土づくりが急速に発展し、コンクリートや鉄の普及で自由な形が生まれました。しかし、一方で都市の姿が無秩序に変化することにもなり、都市を先進諸国のように景観を美しく整えるために、その建設のあり方や施設のデザインを考える研究分野が土木工学分野の中で萌芽しました。土木学会においては、土木計画、景観デザイン、土木史などの活動領域があります。その中でも、景観デザイン分野は、建築学や造園学の分野、都市計画分野と共に融合的な研究領域にあります。当研究室では、研究対象を都市施設に限ることなく、庭園や広場などのオープンスペース、駅舎などの建築物を含め、都市全体の景観形成に広げてきました。都市を美しくするにはそれに関わる多くの対象を総合する必要があるからです。さらに、美しいという価値のみならず、生き生きとした人々の社会生活や文化的、経済的な活動が行われるための社会的な仕組みや使い方も考える必要があります。人々の活力や地域コミュニティ、経営を考慮しないと都市は衰退します。地球環境問題、人口減少と高齢化社会、自然災害、感染症問題など多くの課題を抱えている中で、日本の都市のあり方への研究は、長期による都市形成のスパンで目標を迅速に探求すべき課題となっています。

―どんなことを研究されているのですか?

基本的には、景観の空間的、時間的な構造について把握し、文化的で美しい景観を創造するためのデザインの目標像や設計の方法論を探ります。例えば、都市施設や公共空間の設計プロセス、マネジメント、形態や色彩等に関する研究、自然の山河や都市の眺望景観などの研究、文学に現れた原風景やイメージに関する研究があります。とくに、京都とその周辺都市における山辺や水辺はデザインの宝庫であり、GIS(地理情報システム)やCGなどのグラフィックシステムによる地形解析やデザイン調査等を行い、空間構成と設計技法を精緻に研究しています。また歴史的環境の整備などの空間的な規範について、その成立の歴史的経緯から探求し、都市計画の誘導や政策手法へ反映させる研究を試みています。これまで、疏水や運河、街路などの近代土木遺産をはじめ歴史的価値の探求を行ってきました。さらに、社会的なネットワーク分析やフィールドワークの技法などの様々な手法を駆使し、災害や地域コミュニティレベルの問題を対象に研究を進めています。

―研究室はどのように運営されていますか?

兼任の工学研究科を含めて研究室全体で25名です。教授1名、准教授1名、助教1名、秘書1名、博士課程の学生は3名で、修士課程が12名、学部生5名(地球工学科)、特別聴講生1名(フランス)です。学生居室は桂キャンパスにあり、実験室にて実践的なデザインや演習作業を行います。吉田キャンパスには教員室があります。

― 院生の皆さんがされている研究について教えてください。

院生は、学部で行った研究をさらに修士課程で課題を発展させる人もいますし、新しい課題にチャレンジする人もいます。いずれにしても、学生自らが主体性と意志をもつことを重要視しています。修了した卒業生の多くが、公共の建設系のシンクタンク、コンサルタントや設計事務所、ゼネコンなどで、また国家・地方公務員として活躍しています。国や都市の活力のために、公務的に働き、社会から即戦力も期待されます。そのため、分析思考だけでは世の中のためにはならないと考えており、自分で社会的な課題をみつけ、その総合的な解決に迫る創造力を養うことを目指して、研究を進めています。

(資源循環学廊)

生物多様性保全論分野の紹介

―どんなことを研究されているのですか?

瀬戸口・阪口の専門は植物の系統分類学や系統地理学を基盤とした進化多様性に関する研究です。以前は1年の3分の1は海外に調査に出ている時期もありましたが、最近では国内を中心に研究しています。日本の国内の中にも、南北に長く、亜寒帯から亜熱帯まであり、環境の様々な違いがあります。そういった、日本列島の特徴の中に独自の面白い現象を見つけて、植物がどうやってそれに、環境に適応して進化し、環境に適応して生きているかというところを探っていきたいと思っています。西川は動物で上記とほぼ同じテーマに取り組んでいます。調査フィールドは日本を含む東アジアと東南アジアが中心になります。
結果的に、その多くの割合の植物や動物たちが様々な多様性に富んでいますが、研究で出てきた植物と動物一つ一つを保全、採取、増殖と、やっているうちに、いつの間にか片足半分、完全に保全にどっぷりとつかっていました。

―どのような特徴をもった研究室ですか?

学堂に行くときに、自分たちの個性はなんだろうと考えたときに、biological diversity、多様性進化学、多様性保全学をやっているということで、キーワードは多様性となりました。
また、教養科目を担当する関係で、個々の先生ができるだけ幅広い分野を網羅するようにしています。他の学部みたいに一つで講座を作ると同じ分野になってしまうので。研究の志向は同じ方向を向いていますが、ここの生物多様性の教室の場合は、先生も多様であるということが一つの特徴かと思います。

―院生の皆さんがされている研究について教えてください。

どちらかというと保全よりも進化に関心を持っている学生が多くいます。ただ、最初に進化のことに一番関心を持って研究をやっていますが、結果的に行事に参加したり、部屋にいることで保全を知り、地元の人たちとの関わりというのを見て、そんな中で、将来、進化学とか多様性科学をやりつつも、ある程度、やっているうちに、どうしても保全に関わってくることになっちゃうので、そのときに、そういったことに関わる人になってくれればいいなとは思っています。

―研究室を卒業した学生は、どういった方面で活躍させていますか?

ドクターまでいった人だと、大学が多いです。コンサルに就職した人や、研究の経験を生かして事業化した人もいます。院生にも会社を興したいという人がいるので、もう少しそういう研究の経験をして、社会の中で活躍する人が増えるといいなと思います。
今後、保全とかいろいろ考えると行政との関わりが重要で、特に文化的側面でのつながりを深めたいと考えています。卒業生が研究を経験して教員、役所にいったり、普通のビジネスにいったりとか、もう少し様々なところにいってもらいたいと思っています。結局そのほうが、生物多様性の保全とかいろいろ考えても早いと思うので。いろんな意味でフレキシブルに。それを目指したいなと思います。

(地球親和技術学廊)

持続的農村開発論分野の紹介

―どんな研究室ですか?

もとは農学部の農地計画学研究室として発足しました。その後、農村計画学研究室に名称変更され、2011年から持続的農村開発論研究室として地球環境学堂に参画しています。農村計画学会という学会がありますが、創設当初からこの分野をずっと担ってきました。農村計画学は端的に言うと農村地域における課題解決学です。基本的には地域の課題解決からスタートし、様々なコンセプトや理論、手法を駆使して、具体的な計画や提言を生み出していきます。計画路論や計画手法、計画制度などを作っていきますが、自分たちだけで全てを完結させるのではなく、課題解決に役立ちそうなものは何でも貪欲に使ってみるというプラグマティックな考え方を採用しています。フィールド(現場)には、課題だけでなく、解決方法のヒントも眠っています。当然、フィールドから学ぶことを非常に重視しています。
研究室では日本のことだけではなく、海外の様々な課題にもとりくんでいます。具体的な解決策を出していこうと努力をするのですが、努力をすればするほど、あるいはその地域にかなった提言をしようと思えば思うほど、そこの地域の固有性があり、制度も国ごとに大きく変わっていきます。農村計画学は学際性という点では早くから取り組んできましたが、日本の農村課題を中心に研究してきたので、国際性は逆にかなり遅れていました。われわれの研究室は国際性という点でアドバンテージがあると思っています。

―どんなことを研究されているのですか?

フィールドは関西近辺を中心にしていますが様々です。取り組んでいる課題は、例えば、コミュニティ計画の方法論の開発や地域組織の再編などに関する研究です。定期的に地域に入って、計画策定のお手伝いをしたり、制度的な提案なども継続して行っています。それぞれのテーマごとにいろいろな地域を選択しており、神戸市の集落計画づくり、美山町でのツーリズム、亀岡の農村地域の情報化などにも取り組んでいます。今後は、農村計画にかかわる地域モデルの開発、ワークショップに関する基礎的研究などを重点的に取り組みたいと思っています。

―研究室はどのように運営されていますか?

全体で29名のメンバーです。教授1名、准教授1名。助教1名、研究員は3名で出身はインドネシア、バングラデシュ、日本です。修士課程の学生が13名です。バングラデシュとインドネシア、中国、台湾、韓国出身の学生も含まれます。海外からの学生が多くいるため研究テーマはほんとうに多様です。

―研究員と学生がされている研究は?

研究員は地域の将来を予測するモデルについて、マルシェ、農福連携、防災関係の研究を、学生は、都会の地域における地域社会の防災レジリエンスの向上、多文化共生に配慮したインバウンド観光開発のあり方、3Dモデルを用いたワークショップなどです。特に現在、情報化が急ピッチで進んでおり、例えばスマート農業とか、海外ではスマートビレッジと言いますが、農村にICTのテクノロジーなどが急速に普及しつつあります。これを一つのチャンスと捉え、農村が抱えている様々な過疎化や様々な担い手不足のような部分も含めながら、課題解決を目指しています。

(地球益学廊)